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開催レポート

第4回富裕層観光戦略ウェビナー

第4回富裕層観光戦略ウェビナー
開催日2022年1月24日(月) こちらのイベントは終了しました
開催時刻14:00〜15:00
定員500名
参加条件 無料・事前申込制
主催 一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構
後援 日本政府観光局(JNTO)
一般社団法人 東京ニュービジネス協議会
協賛 株式会社クレディセゾン

【見逃し配信予定です。開催当日のご都合が悪い方も、見逃し配信をご希望の方は是非参加をお申し込みください。】

世界の富裕層に選ばれるために、いま何をすべきかー。

今回は、日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部長 伊与田美歴氏と株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション前代表取締役社長 藤田明久氏のお二人を講師にお迎えし、JNTOとせとうちDMO、それぞれの取組について、お話いただきます。

第一部では、日本の観光戦略の要を担うJNTOで、市場横断プロモーションを担当されておられる伊与田部長に、富裕層誘客の取組みをお話いただきます。

第二部は、日本初にして国内最大規模を誇る「せとうちDMO」を構成する瀬戸内ブランドコーポレーションの藤田前社長に、せとうちエリアの魅力、そして瀬戸内生口島エリアでの実際の開発事例をお話しいただきます。

 

プログラム

講演⑴「高付加価値旅行の推進とJNTO の取組について」

日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部長
伊与田 美歴 氏

講演⑵「瀬戸内生口島のエリア開発事例の紹介」

株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション 前 代表取締役社長
藤田 明久 氏

質疑応答

対象の方

  • 観光戦略を担う自治体・DMO関係者の皆さま
  • 「高付加価値」な観光サービスの提供事業者さま
  • 富裕層の観光需要を獲得したいとお考えの事業者さま、自治体関係者さま
  • そのほか、ご関心のある方
    (意欲のある学生の方の参加も歓迎します)

 

登壇者プロフィール

伊与田 美歴 氏

日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部長

東京都出身。一橋大学法学部卒。英国国立ハル大学法学部修士課程修了。1994年の国際観光振興会(現:日本政府観光局)入会以降、国際コンベンション誘致、JNTOウェブサイトの多言語化、欧米豪市場の広告宣伝事業など、インバウンドプロモーション業務に取り組む。2003-06年JNTOロンドン事務所長次長、2017-18同ローマ事務所長等を経て2021年より現職。

藤田 明久 氏

株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション 前 代表取締役社長

1991年電通入社。子会社の社長や役員を17年勤めた後、2014年プロ経営者に転身。「ぐるなび」「ぱど」と公開企業の副社長を経て、2018年より広島に拠点を移し、せとうちDMOを構成する(株)瀬戸内ブランドコーポレーション社長。瀬戸内エリアに観光産業クラスターを構築すべく、7県を飛び回ってきた。2021年、社長を地元の方に譲り、首都圏担当取締役として東京に拠点を戻し、コロナで傷ついた瀬戸内エリアの観光経済復活を目指して、在京企業に瀬戸内へのヒトモノカネの投資をお願いして回っている。著作「ゼロから新市場を生み出す方程式」(幻冬舎)等多数。 

 

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構について

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構は、ラグジュアリーツーリズムの振興を目的とした団体です。

国内・海外のバイヤー、セラー、自治体、DMOを対象とした、富裕層マーケット専門のプラットフォーム「Luxury Japan Virtual Travel Market(略称:LJTM)」を主催しています。

 

CONTACT

取材や掲載に関してのご相談はお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

開催レポート

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構は、1月24日(月)、第4回目となる「富裕層観光戦略ウェビナー」を開催しました。

今回のテーマは、「世界の富裕層に選ばれるニッポンへーJNTO・せとうちDMOの取組事例共有ー」。日本政府観光局(JNTO)市場横断プロモーション部長・伊与田美歴氏と、株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション前代表取締役社長・藤田明久氏のお2人をゲストに迎え、二部構成でお送りしました。

第一部では、日本の観光戦略の要を担うJNTOで市場横断プロモーションを担当されている伊与田部長に「高付加価値旅行の推進とJNTOの取り組み」についてお話しいただき、第二部では日本初にして国内最大規模を誇る「せとうちDMO」を構成する瀬戸内ブランドコーポレーションの藤田前社長に「瀬戸内生口島のエリア開発事例」について紹介していただきました。

 

高付加価値旅行市場とその動向


1994年の国際観光振興会(現:日本政府観光局)入会以降、国際コンベンション誘致、JNTOウェブサイトの多言語化、欧米豪市場の広告宣伝事業など、インバウンドプロモーション業務に取り組んできた伊与田氏は、2003年JNTOロンドン事務所長次長、2017同ローマ事務所長等の要職を経て、2021年より市場横断プロモーション部長として活躍されています。

2030年には訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人の旅行消費額15兆円を目標に掲げている日本政府。そんな日本政府にとって「高付加価値旅行者の誘致は課題となっており、現在JNTOでは、段階的なインバウンドの再開を見据え、重点分野のひとつとして高付加価値旅行の推進に積極的に取り組んでいます」と話す伊与田氏。

 

JNTOでは、1回の旅行で国際航空券を除いた消費額が1人あたり100万円を超える旅行を高付加価値旅行と定義しているそうですが、2017年の調査では、高付加価値旅行者数は全海外旅行者数の1%にすぎないもかかわらず、その消費額は全体の13%を超えることがわかっています。

「そんな高付加価値旅行者数を日本がどの程度獲得できているかというと、そのシェアは旅行者数・消費額共に1%台に留まっているのが現状です。まだまだ充分に獲得しているとは言えませんが、逆に言えば伸びしろがあるマーケットであるとも言えるかもしれません」と話す伊与田氏は、「コロナ禍で、株価や不動産価格の上昇により、富裕層はより豊かになり、おしなべて一般の観光客より旅行意欲が高くなっています。コロナ禍で一早い回復が見られると予想される富裕層に向けたプロモーションに、各国の政府観光局やラグジュアリーホテルが取り組んでいます」と、海外マーケットも同様に高付加価値旅行者の誘致に力を入れていることを明かします。

 

クラシック・ラグジュアリー」から「モダン・ラグジュアリー」へ


「それらのプロモーション動画を見ると、各国の『高付加価値旅行者像』と『旅の提案』が見えてきます」と語る伊与田氏。各国の映像に共通しているのは“プライベート感”だといいます。「自然の中の貸切のヴィラやプライベートジェット、ヨットといった移動手段は、コロナ禍で密を避ける安全な旅の手段としてニーズが高まっており、ミレニアム世代やそれよりも若い世代が登場する映像が多く、カップルだけでなく、家族での旅行の場面も多く含まれています」と、映像から見えてくる各国の旅行者像を分析します。

また、高付加価値旅行者の定義や価値観も変化しているといい、「すべてにおいて豪華、高級を志向する従来型の旅行(クラシック・ラグジュアリー)と、贅沢よりも本物の魅力・体験を求め、優先度の高い事項に重点的にお金を使うモダン・ラグジュアリーが存在していますが、近年は後者が拡大しており、特にミレニアム世代など40歳以下の比較的若い層で顕著となっています」と語る伊与田氏。こうした傾向は、コロナ禍により旅行そのものが困難になり、その必要性が増していること、さらに地球環境や気候変動に対する世界的な関心が高まっていることから、より急速に顕著になっているといいます。

 

現在、JNTOの取り組みのひとつの柱として挙げられるのが「富裕旅行商談会等への出展および国内富裕旅行商談会の実施」です。「高付加価値層を顧客に持つ海外の旅行会社や業界関係者に対し、日本全体の情報発信を行うとともに、商談を通じたネットワークの強化に努めています。また、高付加価値旅行に特化した商談会やセミナーの開催を通じて国内のサプライヤーのみなさんと海外のみなさんのマッチングを行っています」と話す伊与田氏。昨年12月には、2年ぶりにリアル開催された世界最大級のラグジュアリー商談会、ILTMカンヌに参加したところ、出展者数はコロナ前の8割にまで回復していたんだそう。

もうひとつの柱として行っているのが、「海外の高付加価値旅行者に関心の高いテーマに沿って、旅行施設や体験プログラムなどのコンテンツを収集し、海外の旅行会社向けの商談会やセールスに活用するほか、JNTOのオウンドメディアなどを通じて情報発信をする」こと。コンテンツ収集の際には、一般旅行者向けのコンテンツと差別化するために、7つの指標を設けて評価し、有識者による外国人目線での選定を行っているといいます。ただ、これまで205のコンテンツを選定しているものの、その1/4が東京・京都に集中しているそうで、地方のメニューの拡充が課題になっていると話す伊与田氏。「こうしたコンテンツの情報がありましたらぜひJNTOにもお寄せいただければと思います」と、情報提供を呼びかけていました。

JNTOロサンゼルス事務所によるアンケート調査によると、コロナ後は高品質なサービスをベースとしつつ、個別対応(プライベート)、特別感(エクスクルーシブ)という言葉がキーワードになっており、スポーツ(アウトドア)、異なる文化体験、ウェルネスの順に、一般旅行者に比べて富裕層の関心が高いといいます。「他国と差別化するためには、アクティビティの中に日本ならではの文化を組み合わせたストーリーを新たに発信することが必要だと考えている」と話す伊与田氏は、「旺盛な好奇心を持った、本物の体験を求める高付加価値旅行者の開拓は、地域に観光消費をもたらすだけでなく、地域の文化や伝統の未来への継承、観光地の高付加価値化、ブランド化にも大きく貢献することが期待できると思います」と話し、「JNTOは今後もさらなる情報発信に努めてまいります」とスピーチを締めくくりました。

 

「せとうちDMO」とは


株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション前代表取締役社長・藤田明久氏は、1991年電通に入社後、子会社の社長や役員を17年勤めたのち、2014年プロ経営者に転身。「ぐるなび」「ぱど」の副社長を経て、2018年せとうちDMOを構成する(株)瀬戸内ブランドコーポレーションの社長に就任。2021年社長職を地元の方に譲り、現在は首都圏担当取締役として都内で活躍中です。

せとうちDMOは、瀬戸内海を囲む7県を舞台に観光活性化に取り組んでいる広域DMOです。その特徴は、①官民それぞれが主体の2法人による一体運営、②7県側組織が、“SETOUCHI”を欧米豪に絞って積極的にプロモート(2016〜2019年)、③民間側組織がファンド機能(98億円)を保有し、瀬戸内の魅力を創るプロジェクトを数多く支援、④民間側組織がエリアマネジメント機能を保有し、観光を起点とした地域活性化のモデルケースを次々と創出中、の4つが挙げられます。

 

「瀬戸内ブランド確立のために6つのテーマ、瀬戸内への来訪目的となる『クルーズ』『サイクリング』『アート』、エリアにお金が落ちる仕組みとなる『食』『宿』『地域産品』、に資するモノやコトを洗練させ、瀬戸内の観光競争力を高める活動を実直に進めています」と話す藤田氏は、広島で暮らした3年の間、社長(当時)自ら瀬戸内各地を毎日飛び回っていたといいます。

そして、一般社団法人せとうち観光推進機構(7県側組織)が作った7県19カ所を紹介する動画を流しながら、姫路城や厳島神社などの魅力を矢継ぎ早に話す藤田氏。その中に登場した元乃隅神社(山口県)は戦後に個人が作った歴史の浅い神社にもかかわらず、2015年に日本らしい場所としてCNNに取り上げられると、国内外から多くの観光客を集めたことに注目すべき、と述べました。「瀬戸内は本当に魅力的なエリア。気候は穏やかで人々も優しい。長い歴史もあります。しかしこの数十年、エリア外からの観光的関心を左程得られませんでした。でも元乃隈神社のような洗練された取り組みが契機となって、山口県に点在する元来ポテンシャルを有していた観光施設が国内外から見直されました。今、世界から瀬戸内エリアが再び注目を集め出しているのです」と説明。瀬戸内ブランド確立のためには、洗練された日本的なモノやコトに敏感な、世界の富裕層を振り向かせるような取り組みを、瀬戸内エリアに数多く増やすことが重要だと指摘します。

 

生口島での取り組み


広島県尾道市にある生口島(いくちじま)は、面積31㎢、人口9,383人の小さな島。その島が、しまなみ海道のクルーズやサイクリングを起点に、ここ数年、次々と洗練された取り組みが生まれ、国内外から注目されています。「2017年には『ガンツウ』(内海クルーズ船、動く日本旅館)が瀬戸内海に就航、2018年にはサイクルシップ『ラズリ』(自転車専用フェリー)が生口島に就航。そして、この2つに注目したNew York Times紙が2019年、“今年行くべき観光地”として、日本から唯一『Setouchi』を選びました。実は、せとうちDMOの活動は、これら全てに関わっています」と語る藤田氏。

そして、せとうちDMOと尾道市は、この追い風に乗るために、2019年より現地でのワークショップに取り組みました。地元と地元以外の人、自治体、せとうちDMOが一緒になって「島の古い商店街に立ち寄るサイクリストや観光客が増えてきた今はチャンスではないか?だとしたら、どんな観光地を目指せば良いのか?目指すには、何をすれば良いのか?と、思いをひとつにしながら、どんどんアイデアを出していきました」と話す藤田氏。2020年に訪れた逆風下(コロナ禍)でも、ワークショップを止めずに前進した結果、富裕層向け高品質ホテル『Azumi   Setoda』の誘致に成功、2021年に開業しました。
『Azumi   Setoda』では“島全体がホテル”という考えのもと、サンセットクルーズやサイクリング、レモン狩りなど、島の観光価値を感じることができる多彩なアクティビティを用意。「富裕層の方には、特別感のある穏やかな瀬戸内海でのサンセットSUP体験や、プライベート感のある早朝の船上釣り体験が、高価格ですが満足度も高いと好評です。アクティビティは地元の方が提供するので、地域にしっかりお金が落ちています」と話します。

 

次に、ワークショップから生まれ、同じ2021年に開業したもう一つの施設「Soil Setoda」を紹介。「『Azumi   Setoda』が開業し、ホテルで働く人が島外から移住してきて、町の人口が増えました。それを見た地元の人たちから『彼らは休憩時や休日に美味しいコーヒーを飲んで、都会から来た観光客とワイワイ交流したいだろう』『インバウンド客が洋朝食を楽しめるようにしよう』といったアイデアが生まれ、地元有志が運営する洗練されたオープンなカフェ施設が、生まれたのです」と笑顔で明かしました。

 

せとうちDMOでの「エリアマネジメント」の知見


その後、せとうちDMOはグランピング施設を誘致し、レモンのテーマパーク「シトラスパーク」再生に取り組むなど、生口島での前進を続けています。「生口島に洗練された取り組みを誕生させたことによって、レモン畑や平山郁夫美術館、耕三寺など昔からある観光施設が見直され、島全体の滞在時間が延び、経済効果も高まり、瀬戸内の小さな島が活性化してきました。まさに、洗練された観光『プロダクト』を地元の人たちと創った後に、観光客にとって足りないモノを地元の人達と創って、観光客のニーズを満たしていくことで観光『エリア』としての賑やかさを取り戻し、同様に復活した隣接エリアとスムーズに往来できるよう船やバスを投入して『ルート』を整備する、といった観光地作りの教科書に沿って、実直に取り組んでいるのです」といいます。

 

「地方創生の本来の目的である地域経済を再生するという視点で言えば、洗練された高品質なフルサービスホテルが一つ誕生するだけでは、地域が再生するわけではありません。高級クルーズ船の寄港と同じです。ホテルだけが潤ってもエリアの経済は復活しないのです。大切な事は2つ。一つ目は、わざわざ訪れてくれたインバウンド富裕層が本来望んでいる異なる文化体験、地元との交流といったココでしかできない体験を、プライベート感や特別感を加えるなど、より高い満足を与えられる形へ地元の方と一緒に洗練させ、投入すること。二つ目は、評判を聞きつけて国内外から訪れるフォロワー層、すなわちボリュームゾーンをしっかり取り込めるよう、エリア内に親しみやすい観光施設も矢継ぎ早に投入すること。これで地域経済にお金が落ち、再び潤うようになるのです」と話す藤田氏は、このような考え方を現地で推進する、地元出身のエリアマネジメントのプロデューサーが、各エリアに一人必要、と訴えます。

 

藤田氏は最後に、DMOによる人材育成支援とファイナンス支援の重要性を指摘し、「せとうちDMOには色々な分野のスペシャリストが在籍しており、エリアに派遣してノウハウを共有します。さらに、せとうちDMOが保有する観光活性化ファンドからリスクマネーを提供します。瀬戸内エリアの滞在時間を少しでも長くして、1円でも多くお金が落ちるモデルケースづくりを、現在、生口島を始め様々な場所で取り組み、成果が出てきているので、引き続き瀬戸内エリアに注目をしてください」と締めくくりました。