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開催レポート

第2回富裕層観光戦略ウェビナー

第2回富裕層観光戦略ウェビナー
開催日2021年11月18日(木) こちらのイベントは終了しました
開催時刻14:00 - 15:30
定員500名
参加条件 無料・事前申込制
主催 一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構
後援 日本政府観光局(JNTO)
一般社団法人 東京ニュービジネス協議会
協賛 株式会社クレディセゾン

【見逃し配信予定です。開催当日のご都合が悪い方も、見逃し配信をご希望の方は是非参加をお申し込みください。】

 

上質な宿の整備はコロナ以前からの課題であり、コロナ後を見据えた観光戦略において、スモールラグジュアリーホテル・旅館に大きな期待が寄せられています。そこで、連続企画として、全国の素晴らしいスモールラグジュアリーホテル・旅館の誕生秘話をオーナーや支配人にお話いただき、事例を共有いただくウェビナーを開催いたします。

連続企画第一弾のゲストは、山口県最古、およそ600年の歴史を持つといわれる長門湯本温泉にある「大谷山荘」の大谷和弘社長です。

1881年創業の「大谷山荘」は、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による日ロ首脳会談場所にも選ばれた山口県を代表する名宿です。客室数は111室を誇り、550人を収容できる地域に根付いた大型の宿ですが、その隣に「別邸 音信」を2006年に開業し、今年で15周年を迎えます。

地域の名宿が仕掛けたスモールラグジュアリー旅館「大谷山荘別邸 音信」は、どのようにして誕生したのか−。

誕生秘話や15年の奇跡、そして大谷社長が考えておられるこれからの展望をお話いただきます。また、全国から注目されている長門湯本温泉のまちづくりの取り組みについても、併せてお話いただく予定です。どうぞご期待ください。

 

対象の方

  • 観光戦略を担う自治体・DMO関係者の皆さま
  • 「高付加価値」な観光サービスの提供事業者さま
  • 富裕層の観光需要を獲得したいとお考えの事業者さま
  • スモールラグジュアリーホテル・旅館を作りたいとお考えの事業者さま
  • スモールラグジュアリーホテル・旅館を誘致したいとお考えの自治体関係者さま
  • そのほか、ご関心のある方
    (意欲のある学生の方の参加も歓迎します)

 

登壇者プロフィール

大谷 和弘 氏

株式会社大谷山荘 代表取締役社長

1979年山口県生まれ。名温泉地の旅館で実務経験を積み、2005年に稼業の大谷山荘へ入社。2020年大谷山荘社長に就任。2018年長門湯守株式会社の共同代表に就任。

宮山 直之 氏

一般社団法人ラグジュアリージャパン推進機構 代表理事

1980年西日本新聞社入社、87年西日本新聞社東京支社勤務を経て、95年ニューズライン・ネットワーク株式会社IT企業設立。2003年日本の知的富裕層向け会員制サービス、クラブ・コンシェルジュ株式会社設立、代表取締役社長就任。2005年訪日外国人富裕層向サービス、株式会社ラグジュアリージャパン設立、代表取締役社長就任。18年に亘り富裕層ビジネスに従事している。2016年4月スイスヴォー州ワイン協会より世界で二人目のコマンドール勲章受章。

 

大谷山荘別邸 音信について

名   称 大谷山荘別邸 音信(おとずれ)
所 在 地 〒759-4103 山口県長門市深川湯本2208
公式サイト https://otozure.jp/

 

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構について

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構は、ラグジュアリーツーリズムの振興を目的とした団体です。

国内・海外のバイヤー、セラー、自治体、DMOを対象とした、富裕層マーケット専門のプラットフォーム「Luxury Japan Virtual Travel Market(略称:LJTM)」を2021年10月下旬にリリースする予定です。

CONTACT

取材や掲載に関してのご相談はお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。

開催レポート

一般社団法人ラグジュアリージャパン観光推進機構は、11月18日(木)、株式会社大谷山荘 代表取締役社長・大谷和弘氏を講師に迎え、第2回目の「富裕層観光戦略ウェビナー」を開催しました。

 

前回の講師であるデービッド・アトキンソン氏も言及していたとおり、上質な宿の整備はコロナ以前からの課題であり、さらにコロナ後を見据えた観光戦略において、スモールラグジュアリーホテルや旅館には大きな期待が寄せられています。

 

そこで本ウェビナーでは、連続企画として、全国の素晴らしいスモールラグジュアリーホテル・旅館の誕生秘話をオーナーや支配人に話していただき、事例を共有するウェビナーを開催することとなりました。

 

連続企画第1弾のゲストは、山口県最古、およそ600年の歴史を持つといわれる⻑門湯本温泉にある 「大谷山荘」の大谷和弘社⻑。1881年創業の「大谷山荘」は、当時の安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による日ロ首脳会談の地にも選ばれた山口県を代表する名宿です。客室数は 107室を誇り、550人を収容できる地域に根づいた大型の宿ですが、2006年、その隣に全18室からなる「別邸 音信」を開業、今年で15周年を迎えます。 地域の名宿が仕掛けたスモールラグジュアリー旅館「大谷山荘 別邸 音信」は、どのようにして誕生したのでしょうか。

 

ウェビナーは2部構成で行われ、第1部では大谷社長によるキーノートスピーチが、第2部ではラグジュアリージャパン観光推進機構 宮山直之代表理事との特別対談が行われました。

 

「団体」から「個人」を意識した旅館づくりへ


各温泉地の旅館で実務経験を積んだのち、2005年に家業である大谷山荘に入社し、2020年に社長に就任した大谷社長は、かつて長門湯本の生活の中心であった公衆浴場「恩湯」を復活させるべく長門湯守株式会社を立ち上げ、共同代表としても活躍するなど、自身の旅館だけでなく、温泉の魅力を通して湯本の街を元気にしようと、まちづくりやインバウンドの強化、地元文化の発信にも取り組まれています。

 

キーノートスピーチでは、大谷山荘や長門湯本温泉についての概要や沿革が説明されました。

 

開業以来、次第に旅館の近代化が進んでいったという大谷山荘。1993年までは団体旅行が多く、大浴場や大宴会場の整備、ビュッフェサービスを始めるなど、団体旅行客に特化した旅館づくりを進めていましたが、2006年に「別邸 音信」を開業してからは、大宴会場を改装して露天風呂付客室を整備するなど、団体から個人を意識した旅館づくりに徐々に変容していったといいます。

 

また、長門湯本温泉については、「もともとはひなびた温泉街だった」と話す大谷社長。団体旅行客が多かった昔に比べ、今は個人化が進んでいるといい、福岡から車で2時間で来ることができ、山口県萩市など、周辺の魅力的な観光地を巡るにもいい立地であることを紹介。また、有名観光地である秋吉台や元乃隅神社などにも近く、シーカヤックやスキューバダイビングなど、アクティビティも充実。さらに、元乃隅神社が5〜6年前にCNNで「日本の美しい風景31選」に選ばれてからは、100万人規模で国内外からの観光客が来るようになったことも明かしていました。

 

 

コンセプトは“湯治モダン”


第2部で行われたラグジュアリージャパン観光推進機構 宮山直之代表理事との特別対談では、「別邸 音信」誕生秘話やコロナ禍である現在の状況、マイクロツーリズムへの取り組みや地域でのまちづくりの取り組みなど、さまざまな興味深い内容が語られました。

 

以前、周囲の評判を聞いて興味を持ったことから「別邸 音信」を取材したという宮山理事。2016年には「別邸 音信」でスイスのワイナリーのオーナーを集めたワイン会を開催したというほどの惚れ込みようで、「建築デザインの素晴らしさと食事のおいしさが印象的。お風呂もすばらしい」と絶賛します。

 

もともと湯治宿としてスタートしたところから、コンセプトを“湯治モダン”としたという「別邸 音信」。開業当時は「外資のファイブスターホテルが東京にどんどん参入してきた時代で、“洗練された個人旅行”が主流になるぞと言われ始めた時代」だったといい、「“地域ならでは”だけど、高級感もしっかりある」宿を目指し、宴会場からレストラン・スパ施設等のパブリックスペースへの転換、均質な設計の和室から、客室数を減らし、ゆったりとした個性ある客室へと、スモールラグジュアリーを実現したそう。

 

「裸足で過ごすのもラグジュアリーだと思うんです」と話す大谷社長は、思いきって履物を脱ぎ、お客さまに裸足ですごしていただくことを提案。お部屋は和の香り漂うモダンな雰囲気で、専用の露天風呂からは深い森や満天の星空を眺めることができます。

 

さらに、「旅館で過ごす意味はパブリックスペースにあると思っている」と話し、フィットネスジムやスパトリートメント、バーなどのパブリックスペースが充実していることを明かす大谷社長。お茶室で抹茶を提供する際には萩焼の器を使用するなど、地域の名産品を紹介することも忘れません。また、食事は鉄板焼きや焼き鳥のコースなどがあり、ワインを飲みながらゆっくりいただけるといった、「別邸 音信」ならではの楽しみ方を提案しているといいます。

 

 

コロナ禍で進めた、回復期にむけての取り組み


そんな「別邸 音信」も、新型コロナウイルスの影響で2020年は4〜7月中旬まで営業を自粛するなど、大きな打撃を受けました。「始めのうちは“得体の知れない現象が起きている”という感じだった。社員がこころからおもてなししたいと思えるには、程遠い状況でした」と、これまでに経験したことのない事態が起きたことに対する驚きを明かす大谷社長。

 

しかし、商品開発や人材育成なども含め、コロナ禍でも営業を進めて行く上で、「安心感+プライベート感を重視した新しい生活様式」を取り入れた滞在プランでお客様を受け入れていく方針を打ち出しました。川床で楽しめるカフェプランや、お花見プラン、川床会議プランなどを提案したり、屋上を整備してテラスにするなど、回復期に向けての準備を着々と進めたそう。

 

遠方からの観光客が見込めない現状で、「山口・福岡・広島のお客さまから車で来ていただくような」マイクロツーリズムに再度着目したと話す大谷社長は、「本館の大谷山荘も客室数を減らし露天風呂付客室を増室してきた結果、客室単価も上がっています。コロナのときは特に“プライベートで人に触れない”お部屋の人気が高まったので、今はそういったお部屋からご予約をいただいている状況です」と話し、マイクロツーリズムにおける高単価リピート顧客の獲得につながる可能性を明かしていました。

 

また、地域のまちづくりの取り組みにも尽力している大谷社長は、「長門湯本温泉観光まちづくり計画」実現のために、入湯税を引き上げて翌年の観光事業に使えるような仕組みづくりと運用に、地域コミュニティの方々や行政の方々と公民連携で取り組んだり、地域マーケティングや広報等、エリアマネージメントにも力を入れているといいます。

 

かつて長門湯本の生活の中心であった公衆浴場「恩湯」を復活させるにあたっては、お湯の温度や湯量、泉源の場所や湯音、香りなど本来温泉の持った特性を活かしつつ、大寧寺と長門湯本温泉の歴史を尊重した設計の恩湯を完成させたのだとか。

 

温泉を経営するまちづくり会社である長門湯本温泉まち株式会社の取締役としても活動し、「コロナのときも、この会社があったおかげで勉強会ができたり、街全体でコロナ対策ができた」と話す大谷社長は、「コロナの期間も地域の情報発信を怠らなかった結果、メディアにも継続的に取り上げてもらうことができ、認知が広がった」と話します。

 

 

旅館は「地域のショーケース」


今後の展望について、「簡単に予測はできない状況ですが、ニーズの変化が起こっている。安全と衛生にもとづいた安心感、贅沢、自然との戯れ。そういったことが重要視されるようになってきて、今までなんとなく消費してきたお金を、今後は意識的にちゃんと選択するといった、単なる消費者から“共感者”になっていくと思う」と話す大谷社長。

 

宮山理事から「なぜラグジュアリーツーリズムに注力するのですか?」と聞かれ、「旅館は地域のショーケースだと思っているんです」と明かす大谷社長は、その理由を「食材も器も地域のものを使っているので、旅館に行けばその地域の多様性に触れられる。旅館は文化資本であり、地域の循環経済を生むエンジンの役割を果たしていると思っているんです」と説明します。

 

「来られたお客さまに地域のものを紹介することによって、お買い求めいただいたものが生活の中で活かされ、おまけに、思い出にもなって、使ってもらうたびに長門湯本温泉のことを思ってもらえるんです」と話す社長に、宮山理事も「まさに地域創生ですね」と感嘆の声を上げていました。

 

「15代続いているようなすばらしい作家の先生をお客さまにご紹介することもありますし、若い方にも楽しんでいただけるよう、萩焼の若手の作家には日常の生活で使って楽しいお皿やカップを作ってもらったりもしています」と話す大谷社長。また、大谷山荘でも酒造会社と萩焼作家とのコラボイベント(「地の器と地の酒と」)を開催するなど、積極的な地域創生に取り組んでいます。

 

「本来、贅沢というのは個人的なもの、情緒資本だと思う」と話す大谷社長は、「お客さまの声にきちんと耳を傾けて、最良のものをマッチングし、満足していただけるようにしたい」と話します。

 

 

LJTMの活用で、さらに魅力的な観光地づくりへ


最後に、富裕層マーケット専門プラットフォームであるLJTM(Luxury Japan Virtual Travel Market)について話す大谷社長と宮山理事。「商談会に行かなくてもすばらしい出会いの場があるのが画期的な仕組みだと思う」と話す大谷社長に、「海外の商談会はいちいち行かなきゃいけないし、担当も定期的に変わる。それを継続的にキープできる仕組みを考えたんです」と宮山理事が話すと、大谷社長も「空き時間に商談ができるのは願ったり叶ったりです」とニッコリ。

 

「セラー同士が打ち合わせができる機能もあるので、連動商品なんかもできますよ」と宮山理事が紹介すると、「食事なんかは特に、旅程をトータルでアレンジするためには、セラー同士の連携があるといいですね」と大谷社長も賛同していました。

 

団体旅行から個人旅行への変革を図るだけでなく、まちづくりから関わることで、長門湯本温泉という場所を魅力的な観光地へと進化させ続けている「別邸 音信」の大谷社長。さらにLJTMを活用することは、「短期的にはマイクロツーリズムを目指すものの、今後は日本全国からのお客さまの誘致に努力し、数年後にはインバウンドを見据えて丁寧にやっていきたい」と展望を語る大谷社長にとって、頼もしいツールとなり得るのではないでしょうか。

 

常ににこやかで穏やかな様子で話される大谷社長の、地元に対する並々ならぬ愛情や「別邸 音信」に対する特別な思いが伝わってくる、素晴らしいウェビナーとなりました。